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時差ボケは何日で治る?東回りは1日1時間しか戻らない 図の中の文字: 東は1日、1時間戻る、西は1日、1.5時間戻る、東回り、西回り

時差ボケは何日で治る?東回りは1日1時間しか戻らない

公開 更新 読了 約28分

時差ボケは東回りなら1日1時間しか戻らない

時差ボケは東回りで1日1時間、西回りで1日1.5時間ずつ戻る。

CDC(米疾病対策センター)が医療者向けに出している渡航医学の手引きは、体が新しい時刻に合わせる速さを平均で西回り1日1.5時間・東回り1日1時間としている。人の体内時計はもともと24時間より少し長く、寝る時間を遅らせるほうが早めるより楽だからだ。

時差ボケが出る境目は、厚生労働省のe-ヘルスネットが4〜5時間以上の時差としている。

治るまでの日数は時差の大きさで変わる。キャセイパシフィック航空は香港からニューヨークへ行く例を挙げ、12時間の時差に体が慣れきるまで8〜12日かかることがあると書いている。

この記事でわかること

  • 時差ボケが何時間の時差から出るかを公式10ページで比べた結果
  • 東回りがつらい理由と治るまでの日数の目安
  • 日本から行くとき行きと帰りのどちらがつらくなるか
  • 昼寝・メラトニン・睡眠薬で公式の答えが割れるところ
  • 出発の数日前から着いた翌日までにやること

時差ボケの境目と戻る速さを公式10ページで比べた

今日どこいく?編集部は公的機関と航空会社の公式ページを合わせて10ページ読み比べた。公的機関は厚労省のe-ヘルスネットとeJIM・CDC・NHS(英国民保健サービス)・NIH(米国立衛生研究所)・FAA(米連邦航空局)で、航空会社はエミレーツ航空・ルフトハンザ・キャセイパシフィック航空・カンタス航空だ。見たのは「何時間の時差から出るか」「日ごとにどれだけ戻るか」「東回りと西回りのどちらがつらいか」の3つだ。

並べてみると、数字の出し方はばらばらでも東回りがつらいという答えだけはそろっている。

公式ページ 何時間の時差から出るか 1日に戻る速さ 東回りと西回り
厚生労働省 e-ヘルスネット 4〜5時間以上 — 東向きは症状が強く西向きは軽い
CDC(米国) 2つ以上の時間帯をまたぐ東西の移動 西回り1.5時間・東回り1時間(平均) 西回りのほうが合わせやすい
NIH(米国) — 1〜1.5時間帯ぶん —
FAA(米国) 時間帯をまたいで移動するとき — 西から東へ飛ぶほうがはっきり出る
NHS(英国) 長いフライトのあと ふつうは数日でよくなる —
厚生労働省 eJIM 複数の時間帯を移動するとき — —
エミレーツ航空 いくつもの時間帯を移動するとき 時間帯1つにつき約1日 西回りのほうが問題が少ない
ルフトハンザ 別の時間帯へ急に移るとき 西行きは東行きより約20%速い 東行きのあとのほうが強く出る
キャセイパシフィック航空 いくつもの時間帯をまたぐとき 60〜90分(西1.5時間・東1時間) west is best(西が楽)
カンタス航空 この3つには触れず、機内と着いてからの過ごし方を書いている

※「—」はそのページに書かれていない項目

10ページのうち、時差ボケが出る時差を数字で書いていたのは厚労省のe-ヘルスネットとCDCの2本だけだった。e-ヘルスネットは4〜5時間以上の時差がある地域へジェット機で移動したときに起こるとし、CDCは少なくとも2つの時間帯をまたぐ東西の移動を診断の条件にしている。

時間帯2つぶんは厚労省の4〜5時間より小さいので、CDCの基準ではそれより小さい時差でも時差ボケに当てはまりうる。CDCの診断基準には、移動から1〜2日以内に日中の調子が落ちたり胃腸の不調が出たりすることも入っている。ほかの睡眠の病気や薬の影響などでは説明できないことも条件の1つだ。

戻る速さを数字で書いていたのはCDC・NIH・エミレーツ航空・キャセイパシフィック航空・ルフトハンザの5本だった。いちばん具体的なのはCDCとキャセイパシフィック航空で、どちらも西回り1日1.5時間・東回り1日1時間という同じ数字を出している。

NIHは体が1日に合わせられるのを1〜1.5時間帯ぶんとしていて、CDCの2つの数字と同じ幅になる。エミレーツ航空は移動した時間帯1つにつき約1日で戻るとしている。

ルフトハンザだけは時間ではなく割合で書いていて、西行きのほうが東行きより約20%速く新しい時刻に合うとしている。NHSは数字を出さず、ふつうは数日でよくなるとだけ書いている。

東回りと西回りの違いに触れたのは6本で、厚労省のe-ヘルスネット・CDC・FAA・エミレーツ航空・ルフトハンザ・キャセイパシフィック航空が全部「東回りのほうがつらい」と答えている。逆を書いたページは無かった。キャセイパシフィック航空は航空業界の言い回しとして「west is best(西が楽)」を紹介している。

カンタス航空のページはこの3つの問いには触れず、機内と着いてからの過ごし方を中心に書いている。厚労省のeJIMはメラトニンのページなので、時差ボケについては複数の時間帯を移動するときに起こるという説明にとどまる。

東回りがつらいのは体内時計が24時間より長いから

時差ボケは体内時計と着いた先の時刻がずれて起こる。厚労省のe-ヘルスネットによると、着いた先の時刻で暮らそうとしても夜に寝つけなかったり何度も目が覚めたりする。昼間は強い眠気や作業の能率の低下、消化器の症状などが出る。

東と西で差が出る理由は体内時計の周期にあり、4つの公式がそろって周期が長めなので遅らせる向きのほうが合わせやすいと説明している。

公式ページ 体内時計の周期 そこから書いていること
厚生労働省 e-ヘルスネット 約25時間 遅らせるほうが合わせやすく西向きの飛行は症状が軽い
FAA(米国) 時刻の手がかりが無いと25時間の周期に寄っていく 東へ向かって時間を失うほうが合わせにくい
CDC(米国) 平均で24時間より少し長い 早めるより遅らせるほうが楽で西回りのほうが適応しやすい
ルフトハンザ 24時間より長いリズムに傾く 西へ飛ぶと1日が長くなり体のリズムに合う

CDCの説明を借りると、東へ移動すると壁の時計が先へ進み旅行者は相対的に遅れた状態になる。体内時計を早めないと現地の時刻に追いつけない。西へ移動すると壁の時計が戻るので、体内時計を遅らせて合わせればよい。

人は何もしなくても毎晩少しずつ遅く寝たくなる。CDCはこれを体内時計が24時間より少し長いことの言いかえとして説明している。だから遅寝遅起きになる西回りは楽で、早寝早起きを求められる東回りはつらい。

FAAのパイロット向けの資料は、東へ向かって時間を「失う」ほうが西へ向かって時間を「得る」より体が合わせにくいと書く。だから時差ボケは西から東へ飛ぶほうがはっきり出るという。

ルフトハンザはドイツから米国へ飛ぶ西行きの例を挙げている。1日が長くなる西行きは体のリズムに合い、ドイツからタイへ飛ぶ東行きより約20%速く新しい時刻に合うという。

FAAによると、体内時計を合わせる手がかりでいちばん分かりやすいのは日の光だ。FAAは日の光のほかに気温・睡眠・人との接触・体を動かすこと・決まった食事の時間を挙げている。厚労省のe-ヘルスネットも光を浴びることと人との接触を積極的にとることを対策に入れている。

厚労省とCDCと航空会社が同じ答え。時差ボケは西回りが楽で東回りがつらい。行きと帰りでつらさが違う?。西回りは楽。寝る時間を遅らせる向き。1日に1.5時間ずつ戻る。例:日本からヨーロッパ。東回りはつらい。寝る時間を早める向き。1日に1時間しか戻らない。夜に寝つけない日が続く。日本からはハワイと北米の行きが東回り。今日どこいく?が作ったイラスト図解(人物の悩み+◎△の2枚カード)

朝と夕方で光の効き目は逆になる。CDCによると朝の強い光は体内時計を早め、夕方の光は遅らせる向きに働く。東回りで朝の光を浴びるようすすめられるのはこのためだ。

12時間の時差なら体が慣れきるまで8〜12日かかる

戻る速さが分かると、治るまでの日数の目安も立つ。エミレーツ航空は、体は移動した時間帯1つにつき約1日のペースで元に戻ると案内している。時差の時間数がそのまま日数の目安になる考え方だ。

キャセイパシフィック航空で乗務員の疲労管理を担当する責任者は、いくつもの時間帯をまたぐと体内時計は1日に60〜90分のペースで追いつくと話している。香港からニューヨークへ行くと時差は12時間あり、慣れきるまで8〜12日かかることがあるという。

一方でNHSは、時差ボケはふつう数日でよくなると書いている。キャセイパシフィック航空の8〜12日は体が完全に慣れるまでの日数で、NHSの数日は症状が軽くなるまでの話になる。同じ時差ボケでも、どこまで戻ったら治ったとみるかで日数は大きく変わる。

向きでも日数は変わる。CDCの平均では西回りのほうが1日に戻る量が多いので、同じ時差なら西回りのほうが早く治る。ヨーロッパからの帰りのような東回りは、行きより長引くと考えておく。

出発前の寝不足も長引く原因になる。エミレーツ航空は出発前の睡眠不足で時差ボケが悪化することがあると書いていて、CDCも移動中に眠れないと症状が悪くなるとしている。

治るまでの日数は人によっても違う。NIHは寝起きのリズムを環境に合わせやすい人がいて、そういう人は時差ボケになりにくいと書いている。この違いは遺伝子で決まる部分がある。

東回りと西回りで出発前と着いた日のやり方が変わる

向きによってやることはほぼ逆になり、東回りは早める・西回りは遅らせるが基本になる。

場面 東回り(日本からハワイ・北米など) 西回り(日本からヨーロッパなど)
体内時計を動かす向き 早める(早寝早起き) 遅らせる(遅寝遅起き)
1日に戻る速さの平均 1時間 1.5時間
出発の2〜3日前 1日1時間ずつ早く寝る 1日1時間ずつ遅く寝る
移動の日の朝(CDCの例) 早い時間に強い光を浴びてカフェインをとる 早い時間の強い光とカフェインを避ける
機内(ルフトハンザの案内) 眠るようにする・炭水化物の多い物を食べる 起きている・たんぱく質の多い物を食べる
着いた日の夜(CDCの例) 寝る前にメラトニン 現地の寝る時間まで起きている
大事な予定を入れる時間(ルフトハンザ) 夕方 朝

東回りで大事なのは朝の光だ。エミレーツ航空は東へ移動したときは着いた翌朝に日の光の中を歩くのがよいとしている。CDCの例でも東回りは朝早く光を浴びて、夕方以降の光は避ける。

西回りは着いた日にどれだけ起きていられるかが勝負になる。CDCは現地の寝る時間まで起きていることを挙げ、ルフトハンザは疲れに負けず日が沈んでから寝るよう書いている。ルフトハンザはさらに、西行きなら昼ごろに着く便にして一日でいちばん明るい光を使うのがよいとしている。

機内で寝るか起きているかは、ルフトハンザの案内だと東行きは眠り西行きは起きている。FAAとNHSは到着地が夜なら眠るという決め方をしている。どちらも到着地の時刻に体を寄せる点は同じだ。

出発の2〜3日前から1日1時間ずつずらすやり方は、CDCが慣れるまでの時間を短くできることがあるとして紹介している。ルフトハンザの案内では、西行きなら数日前からいつもより1〜2時間遅く寝る。

日本から行くならハワイと北米は行き、ヨーロッパは帰りがつらい

日本から見ると、ハワイと北米は行きが東回りでヨーロッパは帰りが東回りになる。

行き先 行き 帰り つらくなりやすいほう
ハワイ 東回り 西回り 行き
北米 東回り 西回り 行き
ヨーロッパ 西回り 東回り 帰り
東南アジア 西回り 東回り どちらも時差が小さい行き先が多い
オーストラリア 南への移動が中心 北への移動が中心 どちらも時差が小さい行き先が多い

※方角は今日どこいく?編集部が整理した

時差ボケのつらさは時差の大きさだけでなく向きでも変わる。同じ旅でも行きと帰りでつらさが入れ替わるので、帰りが東回りになる旅は帰国後の予定をゆるめておく。

ハワイと北米へ行くときは前の章の東回りのやり方を行きに使い、ヨーロッパへ行くときは西回りのやり方を行きに使う。帰りはどちらもその逆になる。ヨーロッパからの帰りは東回りなので、日本に着いた翌朝に日の光を浴びておく。

東南アジアとオーストラリアは東西の移動が小さく、時差が小さい行き先が多い。時差が厚労省の境目の4〜5時間に届かないなら、着いた日から現地の時刻で過ごすことを先に考える。

時差の時間数は、行き先の現地の時刻と日本の時刻を比べれば分かる。サマータイムがある国は季節で差が変わるので、旅行の日付で確かめる。

年齢や持病や旅の長さでも時差ボケの出方は変わる

時差ボケの出方は人で違う。CDCは時差ボケの起こりやすさにかかわる要因として、移動した時間帯の数・着いた先での時刻の手がかり・一人ひとりの遺伝的な違い・薬の使用などを挙げている。ある調査では、国際線で出張する人の68%がふだんから時差ボケの症状を感じていたという。

条件ごとに公式の書き方を並べると、年齢と持病と旅の長さで気をつけることが変わる。

こんな人・こんな旅 公式に書かれていること 出どころ
高齢の人 時差ボケになるリスクが高い NIH
体内時計を合わせやすい人 時差ボケになりにくい。合わせやすさは遺伝子で違う NIH
パイロット・客室乗務員・出張の多い人 時差ボケが多い NIH
決まった間隔で薬を飲む人 時間帯をまたぐ前に医師に相談する ルフトハンザ
インスリンを使う人 西行きは食事とインスリンを1回増やし東行きは減らすことがある。医師と相談して決める ルフトハンザ
妊娠中・授乳中の人 メラトニンの安全性はあまり研究されていない 厚生労働省 eJIM
2〜3日の短い旅 現地に合わせず日本の時刻のまま過ごす手がある NHS・CDC・ルフトハンザ

旅の長さはいちばん手軽に使える条件だ。NHSは2〜3日の短い旅なら食事と睡眠の時間を新しい時刻に切り替えない手もあるとしている。帰ってきてからもう一度切り替えずに済むからだ。

CDCが紹介する米陸軍の研究所の資料は、2日未満の短い旅なら新しい時刻に合わせず自宅の時刻で過ごすとしている。ルフトハンザも短い旅は自国の昼と夜のリズムを保ち、「二重の時差ボケ」を避けるよう書いている。

現地時間に合わせる?日本時間のまま?。現地にいるのは2〜3日だけ?。時差は4〜5時間以上ある?。日本時間のまま。寝る時間も食事も変えない。出発前から寄せる。寝る時間を1日1時間ずつずらす。着いてから合わせる。現地の食事時間と日の光で整える。ただし NHSは2〜3日・CDCの例は2日未満の旅。今日どこいく?が作ったイラスト図解(はい/いいえの判定)

薬を飲んでいる人は自分の判断で時刻をずらさない。ルフトハンザは決まった間隔で薬を飲む人に対し、1つ以上の時間帯をまたぐ前に医師へ相談するようすすめている。インスリンを使う人への案内もある。西行きは1日が長くなるので食事とインスリンを1回増やし、東行きは1日が短くなるのでインスリンを減らすことがすすめられている。どちらも出発前に医師と相談して決める。

高齢の人はNIHによると時差ボケのリスクが高い。厚労省のeJIMは、メラトニンは高齢者では若い人より長く効いて日中の眠気を起こすことがあると書いている。妊娠中や授乳中の人のメラトニンの安全性はあまり研究されていない。

仕事でよく飛ぶ人も要注意だ。NIHはパイロット・客室乗務員・スポーツ選手・出張の多い人に時差ボケが多いと書いている。CDCも飛行機によく乗る人ほど前もって計画を立てることが大事だとしていて、慢性的な寝不足と体内時計の乱れが重なって体に響くためと説明している。

航空会社4社は昼寝とメラトニンで答えが分かれる

エミレーツ航空・ルフトハンザ・キャセイパシフィック航空・カンタス航空は、どれも自社の公式サイトに時差ボケの対策を載せている。

航空会社のページを並べると、戻る速さの書き方と昼寝と薬の扱いがそれぞれ違う。

航空会社 戻る速さ 着いた日の昼寝 薬とアプリ
エミレーツ航空 時間帯1つにつき約1日 とても疲れたときだけ短く —
ルフトハンザ 西行きは東行きより約20%速い 日が沈むまで寝ない 睡眠薬とメラトニンは避ける。Timeshifterのアプリを紹介
キャセイパシフィック航空 1日60〜90分(西1.5時間・東1時間) 朝早く着いたら午後2〜6時に90〜120分まで メラトニンは医師に相談。アプリにも触れる
カンタス航空 — 寝ない(瞑想の専門家の話) Timeshifterなどのアプリを紹介

※「—」はそのページに書かれていない項目

昼寝の扱いがいちばん割れた。エミレーツ航空はとても疲れたときだけ短い昼寝をとるよう書き、キャセイパシフィック航空は朝早く着いた日なら午後2〜6時に昼寝を入れて長さを90〜120分までにするとしている。逆にカンタス航空の記事に出てくる瞑想の専門家は、朝に着いて疲れていても昼寝はしないほうがよいと話す。

キャセイパシフィック航空は翌日以降の昼寝として、コーヒーを飲んでから横になる「nappuccino」も紹介している。30分より長く眠らないよう目覚ましをかけ、カフェインが効いてくるおよそ20分後に起きるやり方だ。CDCは短い昼寝の目安を20〜30分としていて、長い昼寝は夜の眠りをじゃますると書いている。

薬の扱いも分かれる。ルフトハンザは睡眠薬とメラトニンは体をさらに乱すので避けるよう書いていて、東行きの機内では睡眠薬の代わりに自律訓練法やリラックスの体操をすすめている。キャセイパシフィック航空は体内時計がずれたときの短い手段としてメラトニンを考える乗客もいると紹介している。そのうえで持病がある人やほかの薬を飲む人は特にかかりつけ医に相談するよう書いている。

日の光を浴びることは4社ともすすめていて、エミレーツ航空は東へ移動したときの朝に絞っている。カフェインはエミレーツ航空が寝る少なくとも4時間前から避けるよう書き、午後4時以降はとらないとしている。キャセイパシフィック航空は午後と夜のカフェイン・ニコチン・お酒を避けるよう書いている。

助言の出どころも会社で違う。キャセイパシフィック航空の記事は乗務員の疲れを管理する社内の責任者が話していて、パイロットや客室乗務員がやっていることをもとにしている。カンタス航空の記事は瞑想の団体をつくった専門家の話で、乗る前に温かい水をグラス3杯飲み機内では1時間ごとに1杯飲むのはその人自身のやり方だ。

時差ボケでよく迷うところ。着いた日に昼寝していい?。メラトニンは効く?。帰りのほうがつらいのはなぜ?。答え。公式でも答えが割れる。短い昼寝なら多数が認める。昼寝はCDCが20〜30分を目安。メラトニンはNHSがすすめない。ヨーロッパからの帰りは東回り。今日どこいく?が作ったイラスト図解(3人の声+答えのチェック)

保安検査では水と薬の持ち込み方に気をつける

時差ボケ対策で機内に持ち込みたくなるのは、水と薬と眠るための道具だ。国際線の保安検査では液体の決まりがかかるので、水の持ち方に気をつける。

国土交通省の決まりでは国際線で液体物を機内へ持ち込むとき、1つの容器を100ml以下にしてジッパー付きの1リットル以下の透明な袋に入れる。袋は1人1つまでで、ジェルやエアゾールも液体物に含まれる。

水をたくさん飲むようすすめる公式は多い。FAAは機内の空気がとても乾いていると書き、飛ぶ前・機内・着いたあとに水をたくさん飲むようすすめている。カンタス航空の記事は水筒を持って乗り、客室乗務員に頼んで中身を足してもらうやり方を紹介している。

国際線では中身の入った大きな水筒やペットボトルは100mlの決まりにかかる。空の水筒で保安検査を通るか、保安検査を通ったあとで飲み物を買う。

薬は液体の決まりの対象外だ。国交省は医薬品とベビーミルク・ベビーフード、特別な制限食を100mlの制限から外している。

飲み薬を持っていくなら、機内に持ち込む手荷物に入れる。ルフトハンザは薬を機内持ち込みの手荷物に入れ、できればいくつかの荷物に分けておくよう案内している。機内にいても便が長く遅れたり行き先が変わったりすることがあるからだ。

薬や電池を使う機器を機内に持ち込めるかは、今日どこいく?の持ち込み早見表で品目ごとに引ける。品目111件の機内持ち込みと預け入れの扱いを航空会社17社の注記と一緒に並べている。薬・衛生は13件で、電池・電子機器は14件ある。

眠るための道具ではNHSがアイマスクと耳栓を挙げ、キャセイパシフィック航空はノイズキャンセリングのヘッドホン・耳栓・アイマスク・首まくらをすすめている。FAAの資料にも、耳栓やヘッドホン・アイマスク・首まくらで音と光をさえぎるやり方が載っている。

時差ボケを軽くしたいなら出発の数日前から6つを順にやる

公式10ページで意見がそろった対策を、やる順番に並べた。旅の長さで合わせるかを決めてから、出発前・機内・着いたあとの順に進める。

  1. 旅の長さで合わせるかを決める。NHSは2〜3日の短い旅なら食事と睡眠の時間を変えない手もあるとしている。それより長く滞在するなら次へ進む。
  2. 出発の数日前から寝る時間を1時間ずつずらす。FAAは旅の数日前から1日1時間ずつ寝る時間を変えるようすすめている。東回りなら早く、西回りなら遅くずらす。
  3. よく寝た状態で出発する。エミレーツ航空は出発前の寝不足で時差ボケが悪化することがあると書いている。NHSも出発前は十分に休むのがよいとしている。
  4. 乗ったらすぐ時計を到着地の時刻に合わせる。ルフトハンザとキャセイパシフィック航空は搭乗してすぐ時計を変えると案内している。到着地が夜なら眠り、昼なら起きている。
  5. 機内では水を飲みお酒とカフェインを控える。CDCは脱水が時差ボケの体の症状を悪くするとして、水分をとりお酒の飲みすぎを避けるよう書いている。
  6. 着いたら日の光を浴び昼寝は短くする。CDCは着いた先で自然の光をできるだけ浴び、長い昼寝は避けるようすすめている。昼寝をするなら20〜30分が目安だ。
出発の数日前から着いた翌日までの流れ。出発の数日前。寝る時間を1日1時間ずつ寄せる。乗ったらすぐ。時計を到着地の時刻に合わせる。着いた日。外に出て日の光を浴びる。2日目から。昼寝は短く・食事は現地の時間。東回りは1日1時間ずつしか戻らない。今日どこいく?が作ったイラスト図解(横並びの手順コマ)

10ページで意見がそろうのは日の光とお酒で、昼寝とメラトニンと睡眠薬は分かれる。

対策 すすめている公式 逆のことを言う公式
着いたら日の光を浴びる 厚労省e-ヘルスネット・CDC・NHS・NIH・エミレーツ・ルフトハンザ・キャセイ・カンタス(8本) なし
お酒を控える CDC・NHS・FAA・エミレーツ・ルフトハンザ・キャセイ・カンタス(7本) なし
出発前から寝る時間をずらす CDC・NHS・NIH・FAA・ルフトハンザ・キャセイ(6本) なし
機内で到着地の時刻に合わせる CDC・NHS・FAA・ルフトハンザ・キャセイ・カンタス(6本) なし
水分をとる CDC・NHS・FAA・ルフトハンザ・キャセイ・カンタス(6本) なし
カフェインをとりすぎない・夜は控える CDC・NHS・FAA・エミレーツ・キャセイ・カンタス(6本) なし
昼寝で補う 厚労省e-ヘルスネット・CDC・エミレーツ・キャセイ(4本・長さの目安はばらばら) 昼は寝ない(NHS・カンタス)
短い旅は日本の時刻のまま CDC・NHS・ルフトハンザ(3本) なし
メラトニン CDC・厚労省eJIM・キャセイ(3本・医師への相談などの条件つき) すすめない・避ける(NHS・ルフトハンザ)
睡眠薬 厚労省e-ヘルスネット・CDC・NHS(3本・短い期間などの条件つき) 避ける(ルフトハンザ)

※時差ボケと移動の対策として書かれているものだけを数えた

意見がそろったのは、着いた先で日の光を浴びることとお酒を控えることだった。どちらも逆のことを書いた公式は1本もない。出発前に寝る時間をずらすことと機内で到着地の時刻に合わせることも、6本がすすめていて反対は無かった。

分かれたのは昼寝と薬だ。昼寝はCDCとエミレーツ航空が短くならよいとし、NHSとカンタス航空の記事は昼は寝ないとしている。メラトニンはCDCが東回りの寝る前に使う案内を出す一方で、NHSは効く根拠が十分でないとしてすすめていない。

分かれる対策は自分の予定で選べばよい。着いた日に仕事がある人は昼寝を短くして夜に備え、薬を使いたい人は出発前に医師に相談する。

時差ボケ対策は便の到着時刻と予定の組み方でも補える

寝る時間をずらす余裕がないときは、乗る便と予定の組み方で補う。CDCは光を浴びるのに都合のよい時刻に着く便を選ぶよう書いていて、ルフトハンザは西行きなら昼ごろに着く便をすすめている。

カンタス航空の記事は夜の便をすすめている。一日中起きていた体は休む準備ができていて、暗くなるとメラトニンが出はじめるからだ。飛行時間が6時間を超えるくらいの便なら特に役立つという。

到着時刻で便を選ぶときは、比較サイトで同じ日の便を時刻順に並べると探しやすい。比較サイトごとの手数料の違いは今日どこいく?の航空券比較サイトの手数料を比べたページで読める。

大事な予定の前には余裕をもって着く。NIHは大事な予定の数日前に着くのがよいとしていて、少しずつ現地の時刻に慣らせると書いている。FAAの資料では、大事な仕事の1〜2日前に着けるなら着いた最初の日は休んで体を少しずつ慣らす。

ルフトハンザは着いてから最初の2日は激しい活動を避けるよう書いている。大事な予定は目がさえている時間に入れ、西行きのあとは朝・東行きのあとは夕方がその時間になるという。

時刻の決め方を自動で出す道具もある。CDCは光を浴びる時間やカフェイン・メラトニン・睡眠のタイミングを旅程に合わせて出す時差ボケの計算ツールを紹介している。ルフトハンザとカンタス航空はTimeshifterというアプリを紹介していて、ルフトハンザはマイルの会員向けの特典にも触れている。

アプリの指示どおりに動くのが難しいこともある。キャセイパシフィック航空は出発前の忙しい時期にアプリの細かい助言に従うのは難しいとしている。そのうえで、よく休んで出発することと寝る時間を1時間ずつ近づけることを現実的な目標に挙げている。

帰国後の時差ボケは休みで補う。ルフトハンザは帰ってから1〜2日は家で過ごせるならそうするよう書いていて、自国の生活リズムに戻る間に体を休められるとしている。

海外の公的機関と航空会社でメラトニンの扱いが違う

時差ボケの薬として名前が挙がるメラトニンは、国と機関で扱いが大きく違う。メラトニンは暗くなると脳から出るホルモンで、夜に光を浴びると出にくくなる。厚労省のeJIMは体内時計のタイミングを整えて眠りを助けると説明している。

扱いを並べると、米国はサプリメントとして売られていて英国の公的機関はすすめていない。

国・機関 メラトニンの扱い 出どころ
米国 ダイエタリーサプリメント扱い。処方薬や市販薬より規制が緩い 厚生労働省 eJIM
米国(CDC) 東回りでは寝る前に使う案内。表示と中身の量が違うことがある CDC
英国(NHS) 時差ボケに効く根拠が十分でないのですすめていない NHS
ほかのいくつかの国 処方箋が無いと手に入らず医薬品とみなされる 厚生労働省 eJIM
ルフトハンザ(ドイツの航空会社) 体をさらに乱すので避ける ルフトハンザ

厚労省のeJIMは、東方へのフライトの4件の研究(旅行者142例)でメラトニンがプラセボより時差ボケの症状を軽くする可能性が示されたと紹介している。西方へのフライトでも2件の研究(旅行者90例)で同じような結果が出ている。

ただしeJIMは、この説明が米国の医療制度に沿って書かれていて日本に当てはまらない内容を含む場合があると断っている。薬を飲んでいる人は使う前に医療機関へ相談し、てんかんの人や血液をさらさらにする薬を飲む人は医師の指導のもとで使うよう書いている。

中身の量にも気をつける。eJIMによると2017年の研究で調べた31種類のメラトニンのサプリメントは、ほとんどが表示の量と中身の量が合っておらず26%にはセロトニンが入っていた。CDCも表示と中身が違う可能性に触れている。

飲む時刻も大事だ。CDCは体内時計が朝だと思っている時間に飲むと遅らせる向きに、夕方だと思っている時間に飲むと早める向きに働くと書いている。時刻を間違えるとかえってずれが大きくなることがある。

睡眠薬の扱いも分かれる。CDCは作用が長く残る鎮静系の薬を機内で避けるよう書き、抗ヒスタミン薬や作用の長いベンゾジアゼピン系の薬は判断力の低下や転倒のおそれがあるので避けるとしている。NHSの考え方は、依存性があるので症状が重いときに短い期間だけ使うというものだ。

時差ボケでよく聞かれる7つの質問に答える

Q. 時差ボケは何時間の時差から出る?
A. 厚労省のe-ヘルスネットは4〜5時間以上の時差がある地域へ移動したときに起こるとしている。CDCの診断基準は2つ以上の時間帯をまたぐ東西の移動なので、それより小さい時差でも当てはまることがある。

Q. 時差ボケは何日で治る?
A. エミレーツ航空の目安は移動した時間帯1つにつき約1日だ。キャセイパシフィック航空は12時間の時差なら慣れきるまで8〜12日かかることがあると書き、NHSは症状はふつう数日でよくなるとしている。

Q. 東回りと西回りはどっちがきつい?
A. 東回りのほうがきつい。CDCによると体が合わせる速さは平均で西回り1日1.5時間・東回り1日1時間で、体内時計が24時間より少し長いため寝る時間を早める東回りのほうが合わせにくい。

Q. 帰国後の時差ボケを軽くするには?
A. ヨーロッパからの帰りは東回りなので行きより長引きやすい。ルフトハンザは帰ってから1〜2日は家で過ごせるならそうするようすすめている。着いた翌朝に日の光を浴びると体内時計を早める助けになる。

Q. 時差ボケに睡眠薬は使っていい?
A. 厚労省のe-ヘルスネットは睡眠薬で夜の睡眠を確保するやり方を対策に挙げている。NHSは依存性があるので症状が重いときに短い期間だけとしていて、ルフトハンザは避けるよう書いている。使うなら医師に相談する。

Q. 時差ボケにメラトニンは効く?
A. 厚労省のeJIMは東方へのフライトの4件の研究(旅行者142例)で症状が軽くなる可能性が示されたと紹介している。一方でNHSは根拠が十分でないとしてすすめていない。米国ではサプリメント扱いだが処方箋が要る国もあるので、使う前に医師に相談する。

Q. 時差ボケで吐き気が出ることはある?
A. ある。NHSは時差ボケで消化不良・吐き気・便秘・食欲の変化が出ることがあると書いていて、ルフトハンザも頭痛や吐き気を挙げている。CDCの診断基準では移動から1〜2日以内に胃腸の不調などが出るとされる。

時差ボケは東回りほど長引くので出発前から寄せておく

時差ボケは東回りで1日1時間、西回りで1日1.5時間ずつ戻る。

厚労省は4〜5時間以上の時差で起こるとしていて、12時間の時差なら慣れきるまで8〜12日かかることがある。

日本からだとハワイと北米は行き、ヨーロッパは帰りが東回りになる。2〜3日の短い旅なら日本の時刻のまま過ごし、長く滞在するなら出発の数日前から寝る時間をずらしておく。着いたら日の光を浴びてお酒を控える。昼寝と薬は公式でも意見が割れるので、薬を使うなら医師に相談する。

この記事の出典

厚生労働省とCDCなど11件のページを開いて書いています。数字と規定はここから取りました。

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  1. 1CDCCDC「Jet Lag Disorder」
  2. 2厚生労働省厚生労働省 e-ヘルスネット「時差症候群」
  3. 3キャセイパシフィック航空キャセイパシフィック航空「How to defeat jet lag」
  4. 4厚生労働省厚生労働省 eJIM「メラトニン」
  5. 5NIHNIH「Circadian Rhythm Disorders – Causes and Risk Factors」
  6. 6アメリカ連邦航空局FAA「Circadian Rhythm Disruption and Aviation」(PDF)
  7. 7NHSNHS「Jet lag」
  8. 8エミレーツ航空エミレーツ航空「Health advice when you arrive」
  9. 9ルフトハンザルフトハンザ「A healthy journey」
  10. 10カンタス航空カンタス航空「How to avoid jet lag on a long-haul flight」
  11. 11国土交通省国土交通省「国際線の航空機客室内への液体物持込制限について」

最終確認 2026年9月28日

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