- 先に答え:登山初心者の山は体力度1〜2・難易度Aから選ぶ
- 長野県123ルートで登山初心者向けの体力度1〜2・難易度Aは7本だった
- 山のグレーディングは県ごとに載っているルートと注意書きが違う
- 難易度A〜Eの境目は登山道の状況と求められる技術で決まる
- 体力度1〜10の境目はルート定数のおよそ10ごとに上がる
- 2026年夏の山岳遭難は転倒と道迷いと滑落の順に多かった
- ルート定数と消費エネルギーは長野県の式で自分でも出せる
- 体力度3と4の境目に近いルートは小屋とアクセスで決める
- 登山届は8県の条例で義務になる山域と時期がある
- 登山口でやることは登山届と装備と下りる道の確認の順になる
- 雨や霧の日と秋の山ではグレーディングの前提が変わる
- 登山初心者が迷いやすい8つの質問に答える
- まとめ:登山初心者は低いルートから経験を積んで登山届を出す
先に答え:登山初心者の山は体力度1〜2・難易度Aから選ぶ
登山初心者は体力度1〜2で難易度Aの山から始め、日帰りは体力度3までにする。
この記事でわかること
- 長野県の123ルートと白山の35ルートで登山初心者向けの低いルートは何本あるか
- 難易度A〜Eと体力度1〜10の境目と日帰りの上限
- ルート定数と消費エネルギーを自分で出す長野県の式
- 登山届が条例で義務になる山域と罰則
- 2026年夏の山岳遭難で多かった原因と年齢
山のグレーディングは県が登山ルートごとに体力度と難易度を付けた一覧だ。体力度は1から10の10段階で、難易度はAからEの5段階で示される。
岐阜県は初心者に、グレーディング表の左下のルートから右上へ少しずつ経験を積むよう呼びかけている。左下は体力度も難易度も低いルートにあたる。
今日どこいく?編集部は長野県の一覧表から県内の123ルートを1本ずつ数えた。体力度1〜2で難易度Aのルートは7本しかなく、日帰りが可能な体力度3まで広げても難易度Aは8本だった。
石川県の白山の35ルートでも体力度1〜2で難易度Aは2本だけだった。白山の御前峰(2,702m)まで登るルートは、どれも体力度4以上になる。
この記事では長野県と白山の一覧を数えた表から始める。そのあと難易度と体力度の境目を並べ、境目を超えたときの遭難の数字と自分で測る式へ進む。最後に登山届の決まりと登山口でやることを順に見ていく。
長野県123ルートで登山初心者向けの体力度1〜2・難易度Aは7本だった
長野県の「信州 山のグレーディング 一覧表」は長野県山岳総合センターが作り、長野県山岳遭難防止対策協会が監修している。載っているのは県内の123ルートと県外の高尾山2ルートで、どのルートにも体力度と難易度とコースタイムとルート定数が付いている。
今日どこいく?編集部はこの一覧を体力度ごとに数えて、石川県の白山の一覧と並べた。白山の一覧は35ルートで、長野県と同じように体力度と難易度で評価している。
表を見ると体力度が上がるほど難易度Aのルートは減り、長野県では体力度5より上に1本も無い。
| 体力度 | 長野県(県内123本) | うち難易度A | 白山(35本) |
|---|---|---|---|
| 1 | 3本 | 3本 | 1本 |
| 2 | 14本 | 4本 | 1本 |
| 3 | 28本 | 1本 | 1本 |
| 4 | 28本 | 1本 | 7本 |
| 5 | 17本 | 0本 | 8本 |
| 6 | 13本 | 0本 | 5本 |
| 7 | 11本 | 0本 | 5本 |
| 8 | 3本 | 0本 | 4本 |
| 9 | 4本 | 0本 | 1本 |
| 10 | 2本 | 0本 | 2本 |
※本数は今日どこいく?編集部が一覧から数えた(2026年10月2日に集めた)
長野県の県内123ルートのうち、体力度1〜2は17本だった。そのうち難易度Aは7本で、残りの10本は難易度Bになる。Bの10本には蓼科山の3ルートや白馬乗鞍岳や木曽駒ヶ岳(千畳敷)が入る。
日帰りが可能とされる体力度3までに広げると45本になる。ただし難易度Aに絞ると霧ヶ峰(八島湿原)が加わるだけで、8本にとどまる。
体力度4以上は78本あり、県内のルートの半分を超える。長野県の一覧の注記では体力度4は1泊以上が適当とされているので、一覧の多くは1泊以上の計画が向くルートになる。
白山の35ルートで体力度1〜2かつ難易度Aなのは2本だった。北縦走路で三方岩岳へ登るルート(体力度1)と、三方岩岳から野谷荘司山まで歩くルート(体力度2)だ。
御前峰(2,702m)まで登るルートは体力度4がいちばん低い。その中で難易度Aなのは、別当出合から砂防新道を往復するルート(コースタイム7.7時間)だけだ。
体力度1〜2で難易度Aの7本と高尾山
7本はどれも累積の登り標高差が0.30〜0.62kmに収まるルートだった。
| ルート(登山口) | 最高地点の標高 | 体力度・難易度 | コースタイム(ルート定数) |
|---|---|---|---|
| 北横岳(ロープウェイの山頂駅) | 2,480m | 1・A | 2.2時間(8.4) |
| 大渚山(湯峠) | 1,566m | 1・A | 2.3時間(8.6) |
| 湯ノ丸山(地蔵峠) | 2,101m | 1・A | 2.3時間(9.8) |
| 荒船山(荒船不動)艫岩往復 | 1,422m(経塚山) | 2・A | 2.9時間(12.9) |
| 黒斑山(車坂峠) | 2,404m | 2・A | 3.6時間(13.4) |
| 根子岳(菅平牧場) | 2,207m | 2・A | 3.7時間(14.7) |
| 烏帽子岳(地蔵峠) | 2,066m | 2・A | 3.8時間(14.0) |
| 参考:高尾山(表参道) | 599m | 2・A | 3.8時間(13.9) |
| 参考:高尾山(琵琶滝) | 599m | 2・A | 2.4時間(12.3) |
※高尾山は長野県の一覧の県外の欄に載っている(2026年10月2日に集めた)
北横岳の最高地点は2,480mある。それでもロープウェイの山頂駅(2,230m)から歩くので、体力度は1になる。
反対に高尾山は599mと低いが、表参道の往復は体力度2でコースタイムは3.8時間ある。標高の高さと体力度は同じではない。登山口がどこにあるかで歩く時間も登る高さも変わるので、山の名前だけで決めずにルートの行で確かめる。
黒斑山(車坂峠)のルートには火山の印が付いている。長野県は登山の前に火山情報を確かめて、その指示に従うよう注記している。
山のグレーディングは県ごとに載っているルートと注意書きが違う
山のグレーディングは県ごとに作られている。体力度の1〜10と難易度のA〜Eという物差しは、長野県・岐阜県・栃木県・新潟県で同じだ。
石川県の白山の一覧も体力度と難易度で評価している。ただし石川県独自のグレーディングなので、同じルートでも他県の評価と違う場合があると断っている。
5つの県のページと一覧を並べると、載っているルートの数と注意書きの中身が違った。
| 県 | 一覧に載っているもの | 版と作ったところ | 注意書きの例 |
|---|---|---|---|
| 長野県 | 県内123ルートと県外の高尾山2ルート | 長野県山岳総合センターが作成 | 体力度3は日帰りが可能・4は1泊以上が適当 |
| 岐阜県 | 75ルート・北アルプスは区間ごとの評価も | 2025年8月20日更新・英語版あり | 初めてのランクは必ず経験者を同伴 |
| 栃木県 | 102ルート | 平成29年度に作成・令和4年度に改訂 | 無雪期・天気良好の評価で条件が違えば難易度は上がる |
| 新潟県 | 体力度・難易度順と五十音順の2つの一覧 | 令和8年7月時点版(2026年7月24日更新) | 入山の際は必ず登山計画書を提出 |
| 石川県 | 白山の35ルート | 2026年現在で通行止めの区間を含むルートに印 | コースタイムに休憩時間は含まれない |
※白山のルート数は一覧から数えた(2026年10月2日に集めた)
岐阜県の75ルートと栃木県の102ルートは、どちらも県内の主要な登山ルートから選ばれている。岐阜県は北アルプスを分岐点や山頂で区切り、区間ごとのルート定数を足して体力度を出せるようにしている。
新潟県は2026年7月24日に令和8年7月時点版へ更新した。長野県境の6山はルートを細かく分けたピッチマップを作り、ヤマレコで公開している。
百名山を目指す人には別の一覧もある。グレーディングを公表している10県2山域からルートを抜き出した日本百名山のグレーディングで、68山の210ルートを評価している。表を作ったのは長野県だ。
どの県も無雪期と天気が良い日を前提にしている
岐阜県・栃木県・新潟県・石川県は、グレーディングが無雪期で天気が良いときの評価だと書いている。栃木県はこれ以外の条件では難易度が上がると明記している。
体力度と難易度の外にも、悪天候や残雪や体調によるリスクがある。岐阜県と栃木県はそれも考えた計画を立てるよう求めている。
過去に登った山の体力度と難易度は、自分のレベルを測る手がかりになる。ただし岐阜県は特に中高年の人に、それはあくまで過去のものだと十分に認識するよう書いている。
どのランクでも、初めてそのランクを経験するときは必ず経験者が同伴する。岐阜県と栃木県が注意事項にそろって書いている決まりだ。
難易度A〜Eの境目は登山道の状況と求められる技術で決まる
難易度は登山道の状況と登山者に求められる技術・能力で5段階に分かれる。岐阜県と栃木県は同じ定義の表を出している。
表で見ると、登山経験が要るかどうかの線はAとBの間にある。
| 難易度 | 登山道の状況 | 登山者に求められる技術・能力 |
|---|---|---|
| A | 概ね整備済・転んでも転落や滑落の可能性は低い・道迷いの心配は少ない | 登山の装備が必要 |
| B | 沢や崖や場所により雪渓を通過・急な登下降がある・道がわかりにくいところがある・転ぶと転落や滑落の事故につながる場所がある | 登山経験が必要・地図読み能力があることが望ましい |
| C | ハシゴ・くさり場や場所により雪渓や渡渉箇所がある・ミスをすると転落や滑落の事故になる場所がある・案内標識が不十分な箇所も含まれる | 地図読み能力とハシゴやくさり場を通過できる身体能力が必要 |
| D | 厳しい岩稜や不安定なガレ場・藪漕ぎが要る箇所がある・手を使う急な登下降がある・人工的な補助は限定的で転落や滑落の危険箇所が多い | 地図読み能力・岩場や雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術・ルートファインディングの技術が必要 |
| E | 緊張を強いられる厳しい岩稜の登下降が続き転落や滑落の危険箇所が連続する・深い藪漕ぎが要る箇所が連続する場合がある | Dの能力に加えて高度な判断力が必要・登山者によってはロープを使わないと危険な場所もある |
難易度Aで求められるのは登山の装備だけだ。Bからは登山経験が必要になり、地図を読む力もあったほうがいいとされる。
転んだときの危なさも段階で変わる。Aは転んでも転落や滑落の可能性は低いが、Bには転ぶと転落や滑落の事故につながる場所がある。Cになるとミスをすると事故になる場所があり、ハシゴやくさり場を通る身体の力も要る。
長野県の県内123ルートでは難易度Bが59本で最も多かった。Cは34本・Dは19本・Eは2本で、Aは9本だった。Eの2本は、どちらも上高地から入る大キレットと穂高縦走のルートだ。
難易度Aでも長い時間を歩くルートがある
難易度は道の険しさの物差しで、歩く長さは表していない。長野県の経ヶ岳(仲仙寺)は難易度Aだが体力度は4で、コースタイムは8.7時間ある。
白山では難易度Aの9本のうち、体力度1〜3は3本だけだった。石徹白道で三ノ峰と別山へ登るルートは難易度Aでも体力度6で、コースタイムは12.6時間になる。
難易度だけで選ぶと、道はやさしくても体力が足りなくなることがある。難易度と体力度の2つは、いつも組にして見る。
体力度1〜10の境目はルート定数のおよそ10ごとに上がる
体力度はルート定数という数をもとに10段階で決まる。岐阜県はルート定数を10で割り、小数点以下を切り上げた数を体力度レベルとしている。
ルート定数はコースタイムとルートの長さと登り下りの標高差から出す数だ。石川県はそのコースを歩いたときにどれだけのエネルギーを使うかを表す数値だと説明している。
長野県の125ルートで確かめると、体力度1〜9はどれもこの決め方どおりの幅に収まっていた。
| 体力度 | ルート定数の幅 | コースタイムの幅 |
|---|---|---|
| 1 | 8.4〜9.8 | 2.2〜2.3時間 |
| 2 | 11.0〜19.8 | 2.4〜5.0時間 |
| 3 | 20.4〜29.9 | 4.4〜8.1時間 |
| 4 | 30.6〜39.9 | 7.0〜10.3時間 |
| 5 | 41.1〜49.9 | 9.8〜14.0時間 |
| 6 | 50.5〜58.8 | 12.8〜16.2時間 |
| 7 | 60.1〜67.8 | 14.8〜19.3時間 |
| 8 | 70.3〜76.3 | 19.7〜20.9時間 |
| 9 | 80.8〜89.2 | 20.5〜25.3時間 |
| 10 | 96.5〜113.1 | 24.2〜32.3時間 |
※長野県の一覧の125ルート(県外の高尾山を含む)から今日どこいく?編集部が最小と最大を拾った(2026年10月2日に集めた)
長野県の一覧の注記では、体力度3は日帰りが可能で体力度4は1泊以上が適当とされている。日帰りと泊まりの境目は体力度3と4の間にあり、長野県の一覧のルート定数でいえば29.9と30.6の間になる。体力度10には、ルート定数が100を超える113.1の裏銀座の縦走も入っている。
コースタイムで見ると体力度3は4.4〜8.1時間で、体力度4は7.0〜10.3時間だった。2つの幅は重なっている。体力度は時間だけでなく、歩く長さと登り下りの標高差も足して決まるからだ。
たとえば金山(金山登山口)は8.1時間で体力度3だが、乗鞍岳の鈴蘭橋から畳平への縦走は7.0時間で体力度4になる。乗鞍岳の累積の登り標高差は1.52kmで、金山の1.15kmより大きいからだ。
体力度1〜2のルートは、長野県の一覧でコースタイムが2.2〜5.0時間だった。初めての山はこのくらいの長さから歩いて、自分のペースをつかむ。
時間の数字には前提がある。石川県の白山の一覧はコースタイムに休憩時間を含まないと注記している。栃木県も歩行時間は目安で、実際にかかる時間には個人差があると書いている。

2026年夏の山岳遭難は転倒と道迷いと滑落の順に多かった
警察庁は山岳遭難の多くが知識・経験・体力の不足などで起きているとしている。天候の判断を誤ったり、不十分な装備で体力的に無理な計画を立てたりする登山だ。体力度や難易度が自分の力を超えるルートを選ぶのも、体力的に無理な計画にあたる。
2026年夏(7〜8月)の山岳遭難は763件で、遭難者は839人だった。そのうち死者と行方不明者は52人で、件数も遭難者も前の年より減った。数字は速報値だ。
都道府県別では長野県が129件で最も多く、静岡県の71件と富山県の65件が続いた。目的別では登山が686人で、ハイキングは31人だった。
態様別に見ると、遭難者がいちばん多かったのは転倒だった。
| 態様 | 2026年夏 | 構成比 | 2025年夏 |
|---|---|---|---|
| 転倒 | 193人 | 23.0% | 216人 |
| 道迷い | 166人 | 19.8% | 171人 |
| 滑落 | 131人 | 15.6% | 126人 |
| 疲労 | 122人 | 14.5% | 124人 |
| 病気 | 111人 | 13.2% | 142人 |
| その他 | 116人 | 13.8% | 138人 |
※夏は7〜8月の2か月。2026年は速報値(2026年10月2日に集めた)
転倒は193人で、遭難者の23.0%を占めた。道迷いは166人で、滑落は131人だった。6つの態様のうち前の年より増えたのは滑落だけで、126人から131人になった。
年齢層別では60歳代が183人で最も多く、50歳代の168人と70歳代の167人が続いた。20歳未満も57人いた。

長野県の令和6年は321件で過去最多だった
長野県警察の統計では、令和6年の山岳遭難は321件で遭難者は350人だった。件数も人数も過去最多で、死者は50人にのぼった。
態様別では転落・滑落と転倒が163件で、全体の50.8%を占めた。道迷いは46件で前の年より16件増え、疲労凍死傷は50件だった。
その他の29件のうち、技量不足は15件で装備不足・不備は7件だった。自分の力量にあった山選びを促すことが、岐阜県と栃木県がグレーディングを作った目的だ。
パーティの人数別では単独が114件で最も多く、35.5%を占めた。死者と行方不明者53人のうち、単独の登山者は21人だった。
遭難者の住まいは長野県が53人で最も多く、東京都と神奈川県が46人ずつで続いた。長野県警察は都市部から長野県の山を訪れて遭難する登山者が多いとしている。
ルート定数と消費エネルギーは長野県の式で自分でも出せる
長野県の一覧の冒頭には、ルート定数と消費エネルギーを出す式が載っている。自分の体重とザックの重さを入れると、そのルートで使うエネルギーの目安がわかる。
- ルート定数=コースタイム(時間)×1.8+ルート全長(km)×0.3+累積登り標高差(km)×10.0+累積下り標高差(km)×0.6
- 消費エネルギー(kcal)=ルート定数×(体重(kg)+ザックの重さ(kg))
式の係数でいちばん大きいのは登りの標高差の10.0で、1km登るごとにルート定数が10増える。コースタイムは1時間ごとに1.8ずつ増える。
高尾山の表参道を体重60kgで歩くと約900kcalが目安
長野県の一覧では高尾山(表参道)のルート定数は13.9だ。コースタイムは3.8時間でルート長は7.7km、登りと下りの標高差はそれぞれ0.46kmある。
体重60kgの人がザック5kgを背負って歩くと、式に当てはめた消費エネルギーは約900kcalが目安になる。式はルート定数と重さのかけ算なので、ルート定数が2倍のルートでは消費エネルギーも2倍になる。ザックが重くなっても同じように増える。
一覧に無い組み合わせのルートも自分で計算できる。石川県は区間詳細一覧表を見て各自で計算するよう書いている。岐阜県の北アルプスも区間ごとのルート定数を足し合わせて体力度を出す。
距離の数え方にも決まりがある。石川県の一覧はルート長を実際に歩く斜面の距離(沿面距離)としている。栃木県はルート全長と累積標高差が図上の計測なので誤差を含むと断っている。
自分の体力度は登った山の記録から見当をつける
自分がどの体力度まで歩けるかは、過去に登った山の体力度と難易度が手がかりになる。登ったルートの体力度を一覧で調べ、そこから1つずつ上げていく。
同じ山でも登山口が違えば体力度も難易度も変わる。長野県の一覧で木曽駒ヶ岳は、千畳敷から登れば体力度2でコースタイムは3.7時間だ。伊那スキーリゾートから登ると体力度7になり、コースタイムは18.3時間かかる。根子岳も菅平牧場からは難易度Aだが、峰の原からは難易度Bになる。
体力度3と4の境目に近いルートは小屋とアクセスで決める
体力度3は日帰りが可能とされるが、同じ体力度3でも日帰りが難しいルートがある。長野県の一覧は甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳の北沢峠からのルートに、宿泊を前提にした計画を勧めると注記している。登山口までのアクセスに時間がかかるためだ。
反対に体力度4でも、ルートの途中に泊まれる小屋やテント場が無いルートがある。長野県はこの5本に、日没までに下山できなくなるおそれがあると注意を書いている。
境目の近くで長野県が注記を付けたルートは7本あった。
| ルート(登山口) | 体力度・難易度 | コースタイム | 長野県の注記 |
|---|---|---|---|
| 甲斐駒ヶ岳(北沢峠) | 3・C | 7.2時間 | アクセスに時間がかかり宿泊を前提にした計画を勧める |
| 仙丈ヶ岳(北沢峠) | 3・C | 7.6時間 | アクセスに時間がかかり宿泊を前提にした計画を勧める |
| 奥茶臼山(しらびそ峠) | 4・B | 8.1時間 | 途中に宿泊できる小屋やテント場が無い |
| 高妻山(戸隠キャンプ場) | 4・D | 8.8時間 | 途中に宿泊できる小屋やテント場が無い |
| 高妻山(戸隠キャンプ場)周回 | 4・D | 8.5時間 | 途中に宿泊できる小屋やテント場が無い |
| 前掛山(浅間登山口) | 4・B | 9.3時間 | 途中に宿泊できる小屋やテント場が無い・火山 |
| 前掛山(車坂峠) | 4・B | 8.7時間 | 途中に宿泊できる小屋やテント場が無い・火山 |
甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳は難易度もCで、地図を読む力とハシゴやくさり場を通る身体の力が要る。体力度は3でも、難易度の面で登山初心者の1座目には向かない。
高妻山の2本は難易度Dだ。手を使う急な登り下りがあって、転落や滑落の危険箇所が多いランクにあたる。
前掛山の2本は火山の印も付いている。登山の前に火山情報を確かめて、その指示に従う。
境目に近いルートを選ぶときは、次の4つで決める。
- 初めての体力度や難易度に上がるときは経験者と一緒に登る(岐阜県・栃木県)
- 日帰りにこだわらず宿泊を前提に計画を立てる(長野県の注記)
- 休憩の時間を確保して余裕のある日程にする(警察庁)
- 1人で登らず信頼できるリーダーを中心にした複数人で登る(警察庁)

登山届は8県の条例で義務になる山域と時期がある
地方自治研究機構の一覧では、登山届や入山の届け出を義務にする条例が8つの県にある。富山県と群馬県は昭和40年代前半に作り、岐阜県・新潟県・長野県・石川県・山梨県は平成20年代後半に作った。
対象の山域と時期と罰則は、県によって大きく違う。
| 県 | 条例 | 届け出が要る山域と時期 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 富山県 | 富山県登山届出条例 | 剣岳周辺の危険地区を冬季(12月1日〜翌年4月1日)に登る人・登山20日前まで | 5万円以下の罰金又は科料 |
| 群馬県 | 群馬県谷川岳遭難防止条例 | 谷川岳の危険地区・冬季以外は登山10日前まで | 3万円以下の罰金 |
| 岐阜県 | 岐阜県北アルプス地区及び活火山地区における山岳遭難の防止に関する条例 | 北アルプス地区と活火山地区(御嶽山・焼岳・白山・乗鞍岳の一部) | 5万円以下の過料 |
| 新潟県 | 新潟焼山における火山災害による遭難の防止に関する条例 | 新潟焼山の活火山地区 | 警告に従わない人に5万円以下の過料 |
| 長野県 | 長野県登山安全条例 | 指定登山道(登山計画書を出す) | 罰則規定なし |
| 石川県 | 石川県白山における火山災害による遭難の防止に関する条例 | 白山の活火山地区 | 5万円以下の過料 |
| 山梨県 | 山梨県登山の安全の確保に関する条例 | 冬季(12月1日〜翌年3月31日)の安全登山推進重点区域・推進区域は努力義務 | 罰則規定なし |
| 静岡県 | 静岡県富士登山条例 | 富士山の入山(入山届と入山証) | 罰則規定なし |
※地方自治研究機構の一覧は2025年12月1日更新(2026年10月2日に集めた)
罰則があるのは富山県・群馬県・岐阜県・新潟県・石川県の5つだ。富山県と群馬県は罰金などの刑罰を定め、岐阜県・新潟県・石川県は5万円以下の過料にしている。
長野県の条例は県の山岳区域の全体を対象にしている。指定登山道を登る人には登山計画書の提出を義務づけていて、罰則規定は置いていない。山に登る人には山岳保険に入る努力義務も課している。
山梨県は冬季に安全登山推進重点区域を登る人に登山届を義務づけ、ほかの推進区域では努力義務にしている。富士山は山梨県と静岡県がそれぞれ別の条例で、登山道の利用の許可や入山の届け出を求めている。静岡県は入山の手数料を4千円とし、山梨県も吉田口の登下山道の使用料を令和7年度から4千円にしている。
岐阜県の北アルプス地区向けのチラシでは、対象の区域を北アルプス地区と焼岳の想定火口域から2km以内としている。届け出なかった人や虚偽の届け出をした人には、5万円以下の過料が科される。
火山の山には県の条例の外にも決まりがある。平成26年9月27日の御嶽山の噴火のあと活動火山対策特別措置法が改正され、登山者に火山の情報を集めることや連絡手段を確保することなどの努力義務が置かれた。内閣府の資料では登山届の提出もこの努力義務にあたるとされている。
救助の費用にも県の決まりがある。埼玉県は県の防災ヘリコプターで救助された登山者から手数料を取る条例を、平成30年1月1日から施行している。額は知事が告示で定める。
登山口でやることは登山届と装備と下りる道の確認の順になる
出かける前と登山口でやることを順に並べた。警察庁の遭難防止の呼びかけと、岐阜県と新潟県の登山届の案内をもとにしている。
- 登山計画書を作り、一緒に登る仲間や家族や職場と共有する。万一のときに素早く捜して助ける手がかりになる(警察庁)。
- 登山届を出す。出し方は登山口の登山届ポスト・オンライン(コンパスやYAMAP)・県や警察への郵送やFAXやメールがある(岐阜県・新潟県)。
- 装備を確かめる。雨具・ツェルト・地図(登山地図アプリを含む)・コンパス・行動食・ヘルメットと、携帯電話の予備バッテリーを持つ(警察庁)。
- 途中から下山できる道(エスケープルート)と危ない場所を地図で確かめる。道に迷ったかもと思ったら、来た道を正規の登山道まで引き返す(警察庁)。
GPS機能付きの携帯電話は、自分の位置を早く救助の側に伝えられる。ただ多くの山では通話できる範囲が限られ、電池の残りにも気をつけるよう警察庁は呼びかけている。
登山地図アプリと紙の地図を一緒に使うと、より正確に位置がわかって道迷いを防げる。滑落や転落のおそれがある場所を通るときは、落石にも備えて必ずヘルメットをかぶる。
新潟県は登山計画書の出し方を3つ挙げている。1つ目はインターネットやアプリから出す方法で、県警のホームページからメールでも出せる。2つ目は県警本部か登る山の最寄りの警察署へ紙で郵送・持参・FAXする方法だ。3つ目は登山口に置かれた登山届提出箱に入れる方法になる。

飛行機で山へ向かうときは登山用品の持ち込みを先に調べる
遠くの山へ飛行機で向かう人は、登山用品を機内に持ち込めるかを先に確かめておく。持ち込み早見表は品目111件を航空会社17社ぶん並べていて、登山ストックや熊よけスプレーやガスボンベも品目に入っている。
飛行機に乗るのが初めてなら、初めての飛行機の記事で乗り方と注意点を読める。行き先の県が空いている月と混む月は47都道府県の混雑で見られる。
雨や霧の日と秋の山ではグレーディングの前提が変わる
県のグレーディングは無雪期で天気が良いときの評価だ。雨や霧の日は同じルートでも難しくなり、栃木県は条件が違えば難易度が上がると書いている。
霧(ガス)や吹雪で見通しが悪いときや体調が悪いときは、道に迷ったり冷静さを失ったりして滑落の危険が高まる。警察庁は早めに登山を中止するよう求めている。
天気の判断は登山の前から始まる。警察庁は常に最新の気象情報をつかみ、登る山の気候に合った服装と雨具を用意するよう呼びかけている。
長野県では秋山の遭難が夏山に次いで多い
長野県の令和6年の統計では、9〜11月の秋山シーズンに88件の遭難が起きた。夏山の116件に次いで多く、冬山は60件で春山は57件だった。
秋山の遭難は北アルプスと八ヶ岳連峰が中心で、10月だけで46件あった。60歳以上の遭難者は7月にピークがあり、秋山の10月にも増えている。
山域では槍穂高連峰と八ヶ岳連峰で、夏山から秋山にかけて遭難が多かった。紅葉の時期に人気の山へ向かう人は、日没までに下山できる計画を立てる。
秋はクマの出没にも気をつける
2026年夏の山岳遭難では、野生動物の襲撃による遭難者が10人いた。
環境省が令和7年11月にまとめた資料によると、ツキノワグマの出没は例年なら6月がピークだ。令和7年度は7月になっても増え、秋に向けても増える傾向にあった。人身被害も令和5年度と同じように秋に増える傾向だった。
登山初心者が迷いやすい8つの質問に答える
Q. 登山初心者におすすめの山はどう選ぶ?
A. 県の山のグレーディングで体力度も難易度も低いルートから選ぶ。長野県の一覧では県内123ルートのうち体力度1〜2かつ難易度Aは7本で、北横岳・大渚山・湯ノ丸山は体力度1だ。
Q. 山のグレーディングの見方は?
A. 一覧で登りたいルートの行を探し、体力度(1〜10)と難易度(A〜E)の2つを確かめる。岐阜県は初心者にグレーディング表の左下から右上へ少しずつ経験を積むよう呼びかけている。
Q. 登山の体力度の目安は?
A. 岐阜県ではルート定数を10で割って小数点以下を切り上げた数が体力度になる。長野県の一覧では体力度3が日帰りが可能で、体力度4は1泊以上が適当とされている。
Q. 登山の消費カロリーはどう計算する?
A. 長野県の式は消費エネルギー(kcal)=ルート定数×(体重+ザックの重さ)だ。高尾山の表参道(ルート定数13.9)を体重60kgの人がザック5kgで歩くと約900kcalが目安になる。
Q. 登山届が義務になるのはどこ?
A. 富山・群馬・岐阜・新潟・長野・石川・山梨・静岡の8県の条例が、決まった山域や時期で届け出を義務にしている。岐阜県は北アルプス地区と活火山地区で、石川県は白山の活火山地区が対象だ。
Q. 登山届を出さないと罰則はある?
A. 条例で違う。岐阜県と石川県は届け出なかった人に5万円以下の過料を科し、新潟県は警告に従わない人に同じ過料を科す。長野県と山梨県の登山の安全の条例には罰則規定が無い。
Q. 山岳遭難の原因で多いのは?
A. 2026年夏(7〜8月)の速報値では転倒が193人で最も多く、道迷い166人と滑落131人が続いた。警察庁は知識・経験・体力の不足などが多くの遭難の原因だとしている。
Q. 日帰り登山は何時間までが目安?
A. 長野県の一覧で日帰りが可能とされる体力度3のルートは、コースタイムが4.4〜8.1時間だった。白山の一覧はコースタイムに休憩時間を含まないので、休む時間を足して計画する。
まとめ:登山初心者は低いルートから経験を積んで登山届を出す
登山初心者が最初に選ぶ山は、県の山のグレーディングで体力度1〜2・難易度Aのルートから探す。長野県の県内123ルートでは7本で、白山の35ルートでは2本がこの条件に入る。
日帰りの上限は体力度3で、体力度4からは1泊以上が適当とされる。難易度はBから登山経験が要り、どのランクでも初めてのときは経験者が同伴する。
出かける前は登山計画書を作って家族と共有し、登山届を出す。岐阜県や石川県のように登山届を出さないと過料がある山域もある。
ほかの季節のおでかけの記事は季節・イベントの記事一覧から探せる。大きな祭りや催しに合わせて出かけるなら、開催月と規模をイベントの早見表で見られる。
この記事の出典
岐阜県と長野県など10件のページを開いて書いています。数字と規定はここから取りました。
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- 1長野県長野県「信州 山のグレーディング 一覧表」(PDF)
- 2岐阜県岐阜県「岐阜県山のグレーディング」
- 3栃木県栃木県「栃木県 山のグレーディング」
- 4石川県石川県「白山のグレーディング ルート一覧表」(PDF)
- 5新潟県新潟県「新潟 山のグレーディング」
- 6警察庁警察庁「令和8年夏期における山岳遭難の概況」(PDF)
- 7長野県警察長野県警察「令和6年中 山岳遭難統計」(PDF)
- 8地方自治研究機構地方自治研究機構「登山安全条例・遭難防止条例」
- 9岐阜県岐阜県「北アルプス地区を登山する皆様へ」(PDF)
- 10環境省環境省「令和7年度のクマ類の動向」(PDF)
最終確認 2026年10月3日
