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温泉の泉質10種類の効能と入ってはいけない人を環境省の基準で並べた 図の中の文字: 泉質ごとに、効き目が違う、浴用と飲用、○×で分かる、単純温泉、塩化物泉

温泉の泉質10種類の効能と入ってはいけない人を環境省の基準で並べた

公開 読了 約24分

温泉の泉質は10種類あり効能も入れない人も泉質ごとに決まっている

泉質は10種類で、効能も入ってはいけない人も泉質で決まる。

この記事でわかること

  • 泉質10種類それぞれの基準と効能(適応症)
  • 入ってはいけない人と泉質で変わる禁忌症
  • 42℃以上の熱い源泉が多い県とぬるい源泉が多い県
  • pHと泉温と濃さの区分の境目と温泉分析書の読み方
  • 湯あたりを防ぐ入り方と温泉を飲むときの量

温泉の脱衣所には泉質や禁忌症を書いた掲示がある。掲示は温泉法第18条にもとづくもので、書く中身の基準は環境省が決めている。

今日どこいく?編集部はこの基準と日本温泉協会の解説から10種類の泉質の効能と禁忌症を1つの表に並べた。あわせて環境省の令和6年度温泉利用状況から都道府県ごとの源泉の本数を泉温で並べ直した。

先に結論を書く。熱があるときなど体の状態で決まる5つの場合は泉質に関係なく温泉に入らない。そのうえで酸性泉と硫黄泉は皮膚や粘膜が過敏な人と高齢者の皮膚乾燥症の人が入ってはいけない泉質になっている。

泉質10種類の基準と効能を環境省の掲示基準で1つの表に並べた

療養泉と呼ばれる温泉には必ず泉質名が付き、泉質ごとに適応症が決まっている。療養泉は温泉の中でも特に療養に役立つ泉質を持つ温泉のことだ。

環境省の禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準(平成26年) (PDF)の画面。赤い枠の中は「「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示」
出典:環境省「環境省の禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準(平成26年)」 (PDF)(10月9日に撮影・赤い枠は今日どこいく?編集部が付けたもの)

療養泉になる条件は源泉で25℃以上か、決まった成分を1つ以上含むことだ。溶存物質なら温泉1kg中に1,000mg以上で、総鉄イオンなら20mg以上が条件になる。

条件に届かない温泉は温泉法上の温泉でも泉質名が付かない。その場合の分析書には「温泉法第2条に該当する温泉」のように書かれる。

10種類を並べると浴用の適応症は塩化物泉と硫酸塩泉に多く、含鉄泉と含よう素泉は飲用の適応症だけになる。

泉質 基準(温泉1kg中) 浴用の適応症 飲用の適応症
単純温泉 溶存物質1,000mg未満で泉温25℃以上 自律神経不安定症・不眠症・うつ状態 ―
塩化物泉 溶存物質1,000mg以上で塩化物イオンが主成分 きりきず・末梢循環障害・冷え性・うつ状態・皮膚乾燥症 萎縮性胃炎・便秘
炭酸水素塩泉 溶存物質1,000mg以上で炭酸水素イオンが主成分 きりきず・末梢循環障害・冷え性・皮膚乾燥症 胃十二指腸潰瘍・逆流性食道炎・耐糖能異常(糖尿病)・高尿酸血症(痛風)
硫酸塩泉 溶存物質1,000mg以上で硫酸イオンが主成分 塩化物泉と同じ 胆道系機能障害・高コレステロール血症・便秘
二酸化炭素泉 遊離二酸化炭素1,000mg以上 きりきず・末梢循環障害・冷え性・自律神経不安定症 胃腸機能低下
含鉄泉 総鉄イオン20mg以上 ― 鉄欠乏性貧血
酸性泉 水素イオン1mg以上 アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・耐糖能異常(糖尿病)・表皮化膿症 ―
含よう素泉 よう化物イオン10mg以上 ― 高コレステロール血症
硫黄泉 総硫黄2mg以上 アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・慢性湿疹・表皮化膿症(硫化水素型は末梢循環障害も) 耐糖能異常(糖尿病)・高コレステロール血症
放射能泉 ラドン111Bq以上(8.25マッヘ単位以上) 高尿酸血症(痛風)・関節リウマチ・強直性脊椎炎など ―

※10種類の泉質を掲示用の泉質名で並べた

浴用の適応症は塩化物泉と硫酸塩泉が5つでいちばん多い。単純温泉は3つで、含鉄泉と含よう素泉には浴用の適応症が無い。

表の適応症とは別に、どの療養泉にも共通する一般的適応症がある。筋肉や関節の慢性的な痛みやこわばり・冷え性・軽症高血圧・疲労回復などがここに入る。

2つ以上の泉質に当てはまる温泉は当てはまる泉質の適応症をすべて掲示できる。たとえば含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉は塩化物泉と二酸化炭素泉の両方に当てはまる。

適応症は特定の病気を治すと約束したものではない。環境省の基準は温泉療養の目的を症状や苦痛を軽くして健康の回復と増進を図ることだとしている。効用は成分だけでなく温熱や温泉地の気候なども合わさって起きるとも書いている。

泉質ごとの特徴は日本温泉協会が解説している。塩化物泉は日本で比較的多い泉質で、飲むと塩辛い。二酸化炭素泉は入ると全身に炭酸の泡が付き、日本では比較的少ない泉質だ。

含鉄泉は湧き出て空気に触れると鉄の酸化が進んで赤褐色になる。硫黄泉のタマゴが腐ったような臭いは硫化水素によるものだ。含よう素泉は時間がたつと黄色く変わる。

日本温泉協会が泉質ごとに例に挙げている温泉は次のとおり。どの泉質がどこで湧いているかの目安になる。

  • 単純温泉:岐阜県の下呂温泉と長野県の鹿教湯温泉
  • 塩化物泉:静岡県の熱海温泉と石川県の片山津温泉
  • 炭酸水素塩泉:和歌山県の川湯温泉と長野県の小谷温泉
  • 硫酸塩泉:群馬県の法師温泉と静岡県の天城湯ケ島温泉
  • 二酸化炭素泉:大分県の長湯温泉と山形県の肘折温泉郷の黄金温泉
  • 含鉄泉:兵庫県の有馬温泉
  • 酸性泉:秋田県の玉川温泉と岩手県の須川温泉
  • 含よう素泉:秋田県の強首温泉と東京都の前野原温泉
  • 硫黄泉:栃木県の日光湯元温泉と神奈川県の箱根温泉郷の小涌谷温泉
  • 放射能泉:鳥取県の三朝温泉と山梨県の増富温泉

入ってはいけない人は全部の温泉に共通の5つと泉質別の2つで決まる

環境省は禁忌症を「1回の温泉入浴又は飲用でも有害事象を生ずる危険性がある病気・病態」と決めている。禁忌症は一般的禁忌症と泉質別禁忌症と含有成分別禁忌症の3つに分かれる。

3つの禁忌症を並べると入浴で泉質が問われるのは酸性泉と硫黄泉だけで、ほかは体の状態で入れるかが決まる。

区分 当てはまる人・とき 対象
一般的禁忌症 病気の活動期(特に熱のあるとき) すべての温泉の入浴
一般的禁忌症 活動性の結核・進行した悪性腫瘍・高度の貧血など体の衰弱が著しいとき すべての温泉の入浴
一般的禁忌症 少し動くと息苦しくなる重い心臓や肺の病気・むくみのある重い腎臓の病気 すべての温泉の入浴
一般的禁忌症 消化管出血・目に見える出血があるとき すべての温泉の入浴
一般的禁忌症 慢性の病気の急性増悪期 すべての温泉の入浴
泉質別禁忌症 皮膚や粘膜が過敏な人・高齢者の皮膚乾燥症 酸性泉と硫黄泉の入浴
含有成分別禁忌症 塩分制限が必要な病態(腎不全・心不全・肝硬変・虚血性心疾患・高血圧など) ナトリウムイオンを含む温泉を決まった量より多く飲むとき
含有成分別禁忌症 カリウム制限が必要な病態(腎不全・副腎皮質機能低下症) カリウムイオンを含む温泉を決まった量より多く飲むとき
含有成分別禁忌症 下痢・腎不全 マグネシウムイオンを含む温泉を決まった量より多く飲むとき
含有成分別禁忌症 甲状腺機能亢進症 よう化物イオンを含む温泉を決まった量より多く飲むとき

※平成26年の基準の禁忌症を全部並べた

一般的禁忌症はどの泉質の温泉でも同じだ。熱があるときや持病が急に悪くなったときは泉質に関係なく入らない。環境省の冊子は体力が落ちているときの温泉浴は体に大きな負担になると説明している。

重い心臓や肺の病気の人が入れないのは水圧による負担が大きいからだ。一方で悪性腫瘍でも全身の状態が良い場合は必ずしも禁忌ではないと冊子は書いている。

泉質別禁忌症があるのは酸性泉と硫黄泉の2つだけだ。皮膚や粘膜が弱い人は温泉浴で「湯ただれ(皮膚炎)」を起こすことがある。

酸性泉と硫黄泉は浴用の適応症にアトピー性皮膚炎が入っている泉質でもある。同じ泉質に適応症と禁忌症の両方が並ぶので、肌の状態が悪い人は温泉療法医などの医師に聞いてから入る。適応症でも病気の時期や体の状態によっては悪くなることがあると日本温泉協会も書いている。

禁忌症に当たっても温泉にまったく入れないわけではない。専門の知識を持つ医師の指導のもとなら温泉療養はできると基準に書かれている。

その温泉に入っていいかを2問で判定。熱がある・持病が悪化している?。肌が敏感・高齢で肌が乾燥している?。入らない。どの温泉でも禁忌症に当たる。泉質を選ぶ。酸性泉と硫黄泉は避ける。入ってよい。41℃以下で10分を目安に。ただし 禁忌症でも医師の指導があれば温泉療養はできる。今日どこいく?が作ったイラスト図解(はい/いいえの判定)

高齢者と子どもと妊娠中の人で変わるところ

環境省の入浴の注意は高齢者と子どもと体の不自由な人に1人での入浴を避けるよう求めている。

高齢者と高血圧症や心臓病の人と脳卒中を経験した人は42℃以上の高温浴を避ける。心肺機能が下がっている人は全身浴より半身浴や部分浴が望ましい。

妊娠中の人について環境省の冊子は「はい。入れます。」と答えている。条件は長時間浴と高温浴を避けることと滑りやすい床に気をつけることだ。

子どもが何歳まで異性の親と同じ浴場に入れるかは泉質ではなく自治体の条例で決まる。年齢の境目は日帰り温泉で子どもは何歳まで異性の親と入れる?で都道府県ごとに並べている。

42℃以上の熱い源泉が多い県は大分県と鹿児島県と北海道が上位に来る

環境省の令和6年度温泉利用状況(令和7年3月末現在)によると全国の源泉は27,899本ある。泉温で分けると42℃以上が12,695本でいちばん多い。25℃以上42℃未満は6,863本で、25℃未満は4,074本になる。

今日どこいく?の「大分空港はどれだけ混む?年間197万人と国内4路線の実績」の画面。大分空港のページ
今日どこいく?の大分空港はどれだけ混む?年間197万人と国内4路線の実績の画面(10月9日時点)

都道府県で並べると42℃以上の源泉は大分県が3,878本でいちばん多く、2位の鹿児島県の1,695本を大きく上回る。

都道府県 42℃以上 25℃以上42℃未満 25℃未満
大分県 3,878本 671本 84本
鹿児島県 1,695本 590本 53本
北海道 1,086本 487本 207本
熊本県 774本 437本 41本
静岡県 676本 271本 79本
青森県 670本 242本 35本
長野県 383本 257本 318本
秋田県 286本 135本 53本
全国 12,695本 6,863本 4,074本

※42℃以上の源泉が多い順に8道県を並べた

大分県は源泉の総数も5,094本で都道府県の中でいちばん多い。湧き出る量も毎分293,610リットルで最も多い。

上位8道県のうち九州の県が3つ入る。熊本県は源泉の総数が1,339本で、そのうち42℃以上が774本ある。

長野県は42℃以上が383本で7番目に多い。ただし25℃未満の源泉も318本あり、熱い源泉とぬるい源泉が同じくらいある県だ。

ぬるい源泉は中国と四国の県に多い

25℃未満の源泉が42℃以上より多い県を並べると中国と四国の県が多く入る。

都道府県 25℃未満 25℃以上42℃未満 42℃以上
広島県 334本 36本 1本
山口県 276本 100本 20本
香川県 185本 15本 0本
兵庫県 160本 206本 77本
岡山県 131本 84本 6本
島根県 109本 95本 62本
愛媛県 106本 65本 18本
千葉県 104本 37本 3本

※25℃未満の源泉が42℃以上より多い県を25℃未満の多い順に8県並べた

広島県は源泉374本のうち25℃未満が334本ある。42℃以上の源泉は1本だけだ。

香川県と徳島県は42℃以上の源泉が0本になっている。関東では千葉県が25℃未満104本に対して42℃以上が3本と少ない。

25℃未満の源泉も温泉法では温泉になる。温泉法の温泉は源泉で25℃以上か、決まった物質を1つ以上含むものと決まっているからだ。

ぬるい源泉を温めて使う施設は加温していることとその理由を掲示する決まりがある。湯船の温かさだけでは源泉の温度は分からないので掲示を見る。

温泉を使う公衆浴場は長野県がいちばん多い

温泉を使う公衆浴場は全国に7,721か所ある。いちばん多いのは長野県の718か所で、静岡県の535か所と鹿児島県の485か所が続く。

温泉を使う宿泊施設は全国に13,425か所あり、静岡県が2,397か所でいちばん多い。前の年度と比べると宿泊施設は246か所増え、源泉は21本減った。

温泉地が何月に混むかを先に知りたいときは47都道府県の混雑(空いている月と混む月)で県ごとに確かめられる。

泉質名の後ろに付くpHと温度と濃さの区分を数字で読み分ける

温泉分析書では泉質名の後ろに「低張性・アルカリ性・低温泉」のような3つの区分が並ぶ。順に浸透圧と液性と泉温の分類だ。

「温泉調査書」と書かれた書類にpHや泉温、成分含有量の表などが記載されている写真
写真:Soica2001 (talk) 16:33, 24 May 2011 (UTC)(Wikimedia Commons・Public domain・切り抜き)

3つの区分の境目を1つの表に並べると泉温は4段で、液性は5段・浸透圧は3段に分かれる。

分け方 区分 境目 例と目安
泉温 冷鉱泉 25℃未満 成分の条件を満たせば温泉になる
泉温 低温泉 25℃以上34℃未満 ―
泉温 温泉 34℃以上42℃未満 ―
泉温 高温泉 42℃以上 高齢者や高血圧の人は避ける温度
液性 酸性 pH3未満 秋田県の玉川温泉はpH1.2
液性 弱酸性 pH3以上6未満 ―
液性 中性 pH6以上7.5未満 ―
液性 弱アルカリ性 pH7.5以上8.5未満 ―
液性 アルカリ性 pH8.5以上 長野県の白馬八方温泉はpH11.3
浸透圧 低張性 溶存物質8,000mg/kg未満 ―
浸透圧 等張性 8,000mg/kg以上10,000mg/kg未満 人の体液は約8,800mg/kg
浸透圧 高張性 10,000mg/kg以上 ―

一般にはpH7が中性とされるが温泉ではpH6以上7.5未満を中性にしている。数字が小さいほど酸性が強く、大きいほどアルカリ性が強い。

液性は湧き出たときのpHで分ける。アルカリ性単純温泉は湧出地で測ったpHが8.5以上の単純温泉のことだ。

同じ温泉でも試験室で測るとpHが変わることがある。日本温泉協会は湧出地でpH10だったアルカリ性単純温泉が試験室ではpH8になる例を挙げている。空気中の二酸化炭素を吸ってアルカリ性が中和されるためだ。

pHは肌ざわりにも関わる。アルカリ性単純温泉は入ると肌が「すべすべ」する感触がある。酸性が強い温泉は入ると皮膚にしみる。

泉温は源泉が地上に湧き出たときか採取したときの温度だ。湯船の温度とは別の数字なので、施設は源泉と使用場所の両方の温度を掲示する。

浸透圧は温泉の濃さの区分になる。人の体液は約8,800mg/kgで等張性に当たる。日本温泉協会は皮膚の表面が守られているので浸透圧で体の水分が出入りする心配はないと書いている。

分析書の数字は調べたときの測定値で、いつも同じ値だと証明したものではない。温泉の分析は10年ごとにやり直す決まりがある。

加水・加温・循環(ろ過)・消毒・入浴剤の添加をしているときは、その旨と理由を掲示する決まりもある。これは温泉法施行規則第10条にもとづく。

湯あたりは入浴を始めて3日から1週間前後に出やすい

環境省の基準は温泉療養を始めておおむね3日〜1週間前後に湯あたりが出ることがあるとしている。気分が悪い・眠れない・胃腸の不調・皮膚炎などがその症状だ。

湯あたりが出ている間は入浴をやめるか回数を減らして回復を待つ。連泊で同じ温泉に何日も入るときほど気をつけたい。

入浴の回数は日を追って増やす。始めて数日は1日1〜2回にし、慣れたら2〜3回まで増やしてよい。

1回の時間は初め3〜10分程度で、慣れたら15〜20分程度まで延ばしてよい。時間は入浴温度によって変わると基準は書いている。

十分な効用を得るための療養期間は通常2〜3週間が適当とされている。短い期間でも気持ちのリフレッシュなどの効用はあると基準は書いている。

1日の中で気をつけるとき

食事の直前と直後と飲酒後の入浴は避ける。酔った状態での入浴は特に避けるよう基準に書かれている。運動のあと30分程度は体を休めてから入る。

起きてすぐの入浴は脱水になりやすい。入る前にコップ1杯程度の水分をとっておく。

入浴のあとは温泉の成分を洗い流さずにタオルで拭き、服を着て30分程度は安静にする。肌の弱い人が酸性泉や硫黄泉に入ったときは温水で流したほうがよい。

冬は高齢者の入浴中の事故が増える

消費者庁は冬季に高齢者の入浴中の事故が多いとして注意を呼びかけている。持病がない人や前兆がない人でも事故は起きるおそれがあるとしている。

消費者庁が挙げる対策は入浴前に脱衣所と浴室を暖めることと浴槽から急に立ち上がらないことだ。精神安定剤や睡眠薬を飲んだあとの入浴も危ないとしている。入る前に同居の人に一声かけて見回ってもらうことも対策に入っている。

41℃以下と10分を目安にすれば泉質に関係なく入り方を決められる

泉質で変わるのは効能と一部の禁忌症で、入り方の目安はどの泉質でも同じだ。消費者庁は湯温41℃以下とつかる時間10分までを目安にしている。

泉質に関係ない入り方の目安。湯温は41℃以下 消費者庁が示す高齢者の入浴事故を防ぐ目安/つかる時間は10分まで 長湯による湯あたりや事故を避けるため/泉質で変わるのは効能と一部の禁忌症 入り方の目安自体はどの泉質でも共通
今日どこいく?編集部が本文の内容から作成

消費者庁と環境省の目安を並べると温度は41℃と42℃が区切りで、時間は10分が1つの区切りになる。

項目 目安 出どころ
お湯の温度 41℃以下 消費者庁
湯につかる時間 10分まで 消費者庁
高温浴を避ける人 高齢者・高血圧症・心臓病・脳卒中を経験した人は42℃以上を避ける 環境省
1回の入浴時間 初めは3〜10分程度・慣れたら15〜20分程度 環境省
1日の回数 始めて数日は1〜2回・慣れたら2〜3回 環境省
運動のあと 30分程度は体を休める 環境省
入浴の前と後 コップ1杯程度の水分をとる 環境省
入浴のあと 30分程度は保温して安静にする 環境省

41℃以下は消費者庁が高齢者の入浴中の事故を防ぐために出した目安だ。環境省の基準も高齢者や高血圧症の人に42℃以上の高温浴を避けるよう求めている。

2つの目安を合わせると高齢の家族と温泉に行くときは41℃以下で10分までを先に決めておくと迷わない。湯船の温度は源泉の温度と違うので、脱衣所の掲示で使用場所の温度を見てから入る。

泉質から決める動き方は次の3つになる。

  • 肌が敏感なら酸性泉と硫黄泉を避けて単純温泉などを選ぶ
  • 酸性泉や硫黄泉に入ったら上がるときに温水で流す
  • 飲泉ができる温泉では掲示の飲用量を先に読む

単純温泉は肌触りが柔らかく癖がなく、肌への刺激が少ない泉質だと日本温泉協会は説明している。肌が敏感な人が泉質で迷ったときの選び先になる。

症状から泉質を選ぶときは泉質別の適応症を逆から引く

環境省の冊子には症状から泉質を引く「症状別泉質選択表」が載っている。冷え性や疲労回復のような一般的適応症の症状は10種類どの泉質でも浴用の適応症になる。

山並みに夕日が沈む景色を望む、標高2000mの野天風呂と書かれた木の湯船の写真
写真:Komoro no kaze(Wikimedia Commons・CC BY-SA 4.0・切り抜き)

泉質別の適応症だけを症状から逆に引くと皮膚の症状は浴用に集まり、便秘や高コレステロール血症は飲用だけに付く。

症状 浴用で適応症がある泉質 飲用で適応症がある泉質
きりきず 塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・二酸化炭素泉 ―
皮膚乾燥症 塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉 ―
アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・表皮化膿症 酸性泉・硫黄泉 ―
慢性湿疹 硫黄泉 ―
不眠症 単純温泉 ―
高尿酸血症(痛風) 放射能泉 炭酸水素塩泉
耐糖能異常(糖尿病) 酸性泉 炭酸水素塩泉・硫黄泉
高コレステロール血症 ― 硫酸塩泉・含よう素泉・硫黄泉
便秘 ― 塩化物泉・硫酸塩泉
鉄欠乏性貧血 ― 含鉄泉

※泉質別適応症だけを並べた。一般的適応症はどの泉質にも付く

きりきずと皮膚乾燥症は塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉の浴用の適応症になっている。この3つは溶存物質が1kg中に1,000mg以上ある塩類泉の仲間だ。

炭酸水素塩泉は皮膚の角質を軟らかくする作用があり、俗に「美人の湯」と呼ばれる。塩化物泉は皮膚に塩分が付いて保温や循環の効果があり、俗に「熱の湯」と呼ばれる。

二酸化炭素泉は入ると小さな泡が体に付くので俗に「泡の湯」と呼ばれる。炭酸ガスが皮膚から吸収されて保温や循環の効果があると冊子は書いている。

硫黄泉は殺菌力が強く、表皮の細菌を取り除くと冊子は説明している。放射能泉は温泉に含まれる微量の放射能が炎症に効くとされている。

適応症の掲示は泉質だけで機械的に決まるものではない。成分だけで温泉ごとの効用を確定するのは難しいため、掲示の中身は都道府県知事の判断に任されている。

飲める温泉は泉質で効くとされる症状が変わり1日500mLまでにする

飲用の適応症があるのは塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・二酸化炭素泉・含鉄泉・含よう素泉・硫黄泉の7つだ。単純温泉と酸性泉と放射能泉には飲用の適応症が無い。

温泉を飲む量は1回100〜150mL程度にする。1日の総量はおよそ200〜500mLまでで、飲むのは食事の30分程度前が望ましい。

15歳以下の人は原則として温泉を飲まない。専門の知識を持つ医師の指導を受けて飲む場合は例外になる。

pH3未満の酸性の温泉は真水で薄めてpH3以上にしてから飲む。このときの1回の量は100mLまでになる。

成分によっては飲む量に上限が付く。ナトリウムイオンを含む温泉は塩分制限が必要な人が決まった量を超えて飲むと禁忌症になる。飲泉場の掲示に書かれた1日の飲用量を必ず確かめる。

温泉は湧き出たあと時間とともに泉質が変わる。飲むのは決められた場所で源泉を直接引いた新鮮な温泉にして、持ち帰って飲むのはやめる。

薬を飲んでいる人は主治医に聞いてから飲む。うがいや慌てて飲むことで水が気管に入る誤嚥にも気をつける。

旧泉質名で書かれた温泉は今の泉質名に読み替える

食塩泉・重曹泉・芒硝泉・石膏泉のような名前は旧泉質名と呼ばれる。昭和53年からは主な化学成分を書いた新泉質名を使うよう環境省が改めた。

旧泉質名と新泉質名の対応。旧泉質名:食塩泉/重曹泉/芒硝泉/石膏泉。新泉質名(昭和53年以降):塩化物泉/炭酸水素塩泉/硫酸塩泉/硫酸塩泉
今日どこいく?編集部が本文の内容から作成

旧泉質名と新泉質名を並べると新しい名前は陽イオンと陰イオンの主成分を「ナトリウム-塩化物泉」のようにつないだ形になる。

旧泉質名 新泉質名 掲示用の泉質名
食塩泉 ナトリウム-塩化物泉 塩化物泉
重曹泉 ナトリウム-炭酸水素塩泉 炭酸水素塩泉
重炭酸土類泉 カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉 炭酸水素塩泉
芒硝泉 ナトリウム-硫酸塩泉 硫酸塩泉
石膏泉 カルシウム-硫酸塩泉 硫酸塩泉
正苦味泉 マグネシウム-硫酸塩泉 硫酸塩泉
単純炭酸泉 単純二酸化炭素泉 二酸化炭素泉
緑礬泉 鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉 含鉄泉
含ヨウ素-食塩泉 含よう素-ナトリウム-塩化物泉 含よう素泉
硫化水素泉 硫黄泉(硫化水素型) 硫黄泉

※日本温泉協会の新旧泉質名対照表から10行を並べた

新泉質名の頭に来るのは陽イオンの主成分だ。主成分はミリバル%がいちばん大きい成分で、次いで20%以上の成分が副成分になる。

旧泉質名で書かれた温泉も表で読み替えれば今の泉質の適応症と禁忌症を引ける。芒硝泉ならナトリウム-硫酸塩泉で、掲示用の泉質は硫酸塩泉になる。

温泉に着いたら泉質の掲示を見てから湯船に入る6つの手順

温泉の施設は脱衣室など見やすい場所に泉質や禁忌症を掲示している。東京都は温泉に入る前に読んでみるよう呼びかけている。

  1. 脱衣所の掲示で泉質と禁忌症と加水や加温の有無を読む
  2. 入る前にコップ1杯程度の水を飲む
  3. 手足からかけ湯をして湯の温度に慣らし体を洗う
  4. 初めは3〜10分程度を目安に静かにつかる
  5. 立ちくらみを起こさないよう湯船からゆっくり出る
  6. 上がったら成分を洗い流さずタオルで拭き水分をとって30分程度休む

手順の時間と水分の量は環境省の入浴の基準による。めまいや気分が悪くなったときは近くの人に助けを求め、頭を低くしてゆっくり湯船を出て横になる。

掲示に載るのは源泉名・泉質・源泉と使用場所の温度・成分・分析した年月日・禁忌症・入浴の注意などだ。加水・加温・循環・入浴剤や消毒をしているときはその旨と理由も載る。

浴槽の湯を清潔に保つため、タオルは浴槽に入れない。肌の弱い人が酸性泉や硫黄泉に入ったときは手順の最後で温水を使って流す。

温泉に入る前にこんなことしていませんか。環境省の入浴の注意で避けるよう書かれた4つ。お酒を飲んでから入る。かけ湯をせずに湯船へ。42℃以上の熱い湯に長くつかる。入浴の前後に水を飲まない。当てはまる人は。水を1杯飲みかけ湯をして10分を目安に。今日どこいく?が作ったイラスト図解(「こんなことしていませんか」のチェック場面)

宿や日帰り温泉のほかの記事は宿・温泉・キャンプの記事一覧にまとめている。

温泉の泉質でよくある質問に答える

Q. 温泉の泉質は何種類ある?
A. 療養泉の泉質は単純温泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・二酸化炭素泉・含鉄泉・酸性泉・含よう素泉・硫黄泉・放射能泉の10種類になる。療養泉の基準に届かない温泉には泉質名が付かない。

Q. 単純温泉とアルカリ性単純温泉は効能が違う?
A. 浴用の適応症はどちらも自律神経不安定症・不眠症・うつ状態で同じだ。湧出地のpHが8.5以上の単純温泉をアルカリ性単純温泉と呼び、入ると肌がすべすべする感触がある。

Q. 温泉に入ってはいけない人はどんな人?
A. 熱があるときや重い心臓や肺の病気がある人など5つの場合はどの温泉にも入らない。酸性泉と硫黄泉は皮膚や粘膜が過敏な人と高齢者の皮膚乾燥症の人が禁忌症になる。

Q. 妊娠中でも温泉に入っていい?
A. 環境省の冊子「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」は入れると答えている。条件は長時間浴と高温浴を避けて滑りやすい床に気をつけることで、環境省の基準は42℃以上を高温浴としている。

Q. 温泉は何度からが温泉?
A. 温泉法では源泉で25℃以上あれば温泉になる。25℃未満でも溶存物質が1kg中に1,000mg以上など決まった物質を1つ満たせば温泉で、泉温の分類では冷鉱泉と呼ぶ。

Q. 温泉分析書はどこを見ればいい?
A. 泉質名とその後ろに並ぶ浸透圧・液性・泉温の3つの区分を先に見る。分析は10年ごとにやり直す決まりなので、分析した年月日と加水や加温の有無も確かめる。

Q. 温泉は1日に何回まで入っていい?
A. 環境省の基準では入浴を始めて数日は1日1〜2回にし、慣れたら2〜3回まで増やしてよい。1回の時間は初め3〜10分程度で、慣れたら15〜20分程度まで延ばせる。

Q. 温泉のお湯は飲んでもいい?
A. 飲泉の許可を受けた場所の新鮮な温泉なら飲める。量は1回100〜150mL程度で1日200〜500mLまでにし、15歳以下の人は原則として飲まない。

まとめ:泉質で効能と入れない人を確かめてから湯船に入る

温泉の泉質は10種類あり、効能を示す適応症は泉質ごとに環境省の基準で決まっている。

入ってはいけない人は熱があるときなど全部の温泉に共通の場合と、酸性泉と硫黄泉の泉質別禁忌症で決まる。肌が敏感な人や高齢で肌が乾燥している人はこの2つの泉質を避ける。

42℃以上の源泉は全国に12,695本あり、大分県の3,878本がいちばん多い。

入るときは41℃以下と10分までを目安にして、脱衣所の掲示で泉質と禁忌症を先に読む。

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